かけがえのない息子を失った父親と遺族は、哀しみに暮れる暇もなく法改正に向けた運動に身を投じた。学校や市教委の不誠実な対応に絶望しながらも、二度と同じ悲劇を繰り返させないために全国を駆け巡り、自ら手に入れた証拠をもとに国会や行政へ働きかけを続けた。この壮絶な闘いこそが、日本の法制度を動かす原動力となった。
その執念が結実したのが、2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」である。同法では「重大事態」の定義が明記され、いじめによって児童の生命や身体に重大な被害が生じた疑いがある場合、第三者委員会による迅速かつ中立な調査を行うことが義務付けられた。遺族の流した涙と血の滲むような訴えが、日本の法体系に大きな足跡を刻んだ瞬間であった。