このゲームを語る上で避けて通れない歴史的事件がある。1980年、コンピュータ科学者のオレン・パタシュニクが、4×4×4の空間(当時のゲーム名「Qubic」)において、完璧な手を打ち続ければ必ず先手が勝つという完全解を数学的に導き出したのだ。
ゲーム理論の観点から見れば、運の要素が一切存在しない「完全情報アブストラクトゲーム」の極致である。全76本の勝利ラインが存在するこの立体空間において、先手が放つ初手は、盤面全体に不可視の支配網を張り巡らせる。だが、安心してほしい。76本のラインが複雑に交差する空間把握は、人間の脳のメモリを遥かにオーバーしている。「理論上は先手必勝」と知りつつも、生身の人間同士が対峙した瞬間、その定理はいとも簡単に崩れ去るからだ。