四川料理の真髄は、「麻(マー=痺れ)」と「辣(ラー=辛さ)」の立体的なレイヤー構造にある。多くの人が犯しがちな失敗は、花椒を最初から炒めて香りを飛ばしてしまうことだ。痺れを司る花椒の精油成分は熱に弱く、加熱しすぎると苦味に変わってしまう。本場の技法では、仕上げの直前と盛り付けの瞬間にミルで挽きたてを振りかける。
豆腐の下処理も妥協できない。塩を加えた湯で1分ほど弱火で下茹ですることで、豆腐の余分な水分が抜け、崩れにくくなると同時に餡との一体感が劇的に増す。油をケチらず、しっかりとした油膜で全体を包み込むように仕上げることで、熱が逃げず、最後の一口まで火傷しそうなほどの熱狂を味わうことができる。