ネット上の一部言説では、「首脳同士の直談判があれば関係は好転するのではないか」「エネルギー不足に直面すればロシアも対日姿勢を軟化させるはずだ」といった楽観論が散見されます。しかし、外交実務の現場を直視すれば、これらは重大な認識の誤りと言わざるを得ません。
第一の盲点は、ロシア外務省の外交ドクトリンにおける「非友好国」の定義です。ロシア側にとって、日本がG7の一角として金融制裁や輸出管理措置を維持している以上、日本を「敵対勢力の手先」と位置づける基本方針は法制化されており、現場の事務レベル交渉で修正できる余地はありません。
第二に、サハリン2をはじめとする天然ガス・石油開発プロジェクトにおいて、ロシア側は既に大統領令や法改正を通じて主導権を完全に掌握しました。日本側が権益を維持しつつも発言権を削ぎ落とされる構造が完成しており、「エネルギーカードを握っているのはロシア側である」という非対称性が固定化しています。
したがって、「水面下での調整による早期の雪解け」を期待するのは極めて非現実的であり、対立構造は構造的・長期的なフェーズに入っていることを前提に情勢を見極める必要があります。