「やばたにえん」という言葉の根本的な意味は、形容詞の「やばい」そのものです。ピンチに陥ったときの焦り、驚き、あるいは凄まじい状況に直面した際の感情を表現する言葉として機能しています。
元ネタの構造は極めてシンプルで、「やばい」の語尾に食品メーカー大手「株式会社永谷園(ながたにえん)」の名称を接続させた語呂合わせです。日本語の俗語史において、昭和期の「冗談はよしこさん」や平成期の「いただきマンモス」のように、言葉の末尾に有名人や企業名、名詞をリズミカルにドッキングさせる言葉遊びの系譜を受け継いでいます。
発祥の地となったのは、2016年前後の女子中高生(JK)コミュニティおよびTwitter(現X)界隈でした。語尾に「たにえん」を付けることで、緊迫した「やばい」という感情をコミカルに中和し、親しい間柄で軽やかに伝えるコミュニケーションツールとして愛用され始めました。
このスラングが一気に全国的な知名度を獲得した起爆剤となったのが、人気インフルエンサーkemio(けみお)によるYouTubeやSNSでの発信です。彼のハイテンションかつリズミカルなトーク内で頻繁に使用されたことで、Z世代を中心に爆発的なブームが巻き起こりました。その勢いは留まることを知らず、「JC・JK流行語大賞2018」のコトバ部門において第1位を獲得するなど、名実ともに時代を象徴する言葉として認知されるに至ったのです。