山口智充が全国ネットのレギュラー番組を退いた象徴的な出来事が、2008年4月から2020年3月まで約12年間にわたってMCを務めた土曜朝の生情報バラエティ番組『にじいろジーン』(カンテレ・フジテレビ系)の終了でした。毎週土曜日の朝、スタジオで見せる人懐っこい笑顔とゲストへの細やかな気配りは視聴者に広く愛されていましたが、突如の番組終了を機にキー局地上波での露出が一気に激減したため、「テレビ局幹部を怒らせて降板させられた」「大物タレントの逆鱗に触れて干された」といった根拠のない憶測が飛び交いました。
キー局編成担当者や番組制作関係者の証言を総合すると、番組終了の背景にあったのは個人のトラブルなどではなく、テレビ業界全体の構造的転換(コア視聴率の重視)でした。2020年代初頭から民放各局は、13歳から49歳の若年・購買層をターゲットとする視聴率指標へ舵を切り、長年続いた長寿情報番組の全面刷新を一斉に断行しました。同時間帯の競合番組との差別化を図る局側の編成方針に伴う自然終了であり、トラブルによる降板という言説は明確な誤認です。
もう一つの決定的な要因は、テレビ界で主流となった「ひな壇バラエティ」や「ゴシップ・炎上消費」に対する山口本人の強い違和感でした。過去の特番インタビューや自著で本人が語った生の告白によると、彼は「決められた台本通りに予定調和でリアクションすること」や「誰かをいじったり貶めたりして笑いを取ること」を極端に嫌う性分を持っています。大勢のタレントがひな壇に並び、トークの隙間に短いフレーズを差し込んで目立つことを競い合うテレビの様相は、じっくりと街の人々と触れ合い、職人的な芸を練り上げる彼のスタイルと相反するものでした。自分を偽ってまで消耗戦に参加する道を退き、自ら全国ネットの露出を絞り込んだというのが実態です。