多くの高校生がつまずく決定的な疑問が、「M殻には18個入るはずなのに、なぜアルゴン(原子番号18:K2, L8, M8)の次に来るカリウム(原子番号19)は、M殻に9個目が入らずにN殻へ電子が移るのか(K2, L8, M8, N1)」という点です。
この謎を解く鍵が、大学入試の二次試験や専門化学で本格的に登場する軌道電子配置spdfの概念です。実は、電子殻は大雑把な部屋の枠組みに過ぎず、その中にはさらに細かい「軌道(電子が入る個別の小部屋)」が存在しています。
- s軌道:球状の軌道。1つの殻に1部屋(最大2個収容)。
- p軌道:亜鈴状(ダンベル型)の軌道。直交する3部屋(最大6個収容)。
- d軌道:複雑な形状の5部屋(最大10個収容)。
- f軌道:さらに複雑な7部屋(最大14個収容)。
それぞれの電子殻を小部屋に分解すると、K殻は「1s」、L殻は「2s, 2p」、M殻は「3s, 3p, 3d」で構成されます。ここで極めて重要な現象が起きます。電子間の反発や遮蔽効果の影響により、エネルギー準位の序列が「3p < 4s < 3d」と逆転するのです。自然界の電子は「よりエネルギーの低い(安定した)部屋」から優先的に入るため、3pが6個で満たされた後は、エネルギーの高い3dを素通りして、先に外側の4s軌道(N殻)へと電子が潜り込みます。
この電子の入り方を司っているのが、量子化学における2大原則です。
1. パウリの排他原理詳細まとめ
1つの原子軌道(1つの部屋)には、自転方向(スピン)が逆向きの電子2個までしか入れません。同じスピンを持った電子が同一の部屋に同居することは量子力学的に不可能です。
2. フントの規則
エネルギーが等しい複数の軌道(例えば3つのp軌道や5つのd軌道)に電子が入る際、電子同士のクーロン反発を避けるため、電子はまずスピンの向きを揃えて別々の部屋に1個ずつ(不対電子として)配置され、その後に2個目の電子が入ってペアを作ります。