春や夏の大会期間中、県営あづま球場やいわきグリーンスタジアム、ヨーク開成山スタジアムのバックネット裏に足を運ぶと、掲示板のテキストからは決して伝わってこない独特の空気が流れています。常連の高校野球ファン、いわゆる「バックネット裏の主」たちやNPB・大学球界のスカウト陣が発する言葉には、現場ならではの鋭い視座が宿っています。
あるプロ球団の東北担当スカウトは、バックネット裏の記者席で次のように語っていました。
「ネットの掲示板では球速の数字ばかりが騒がれますが、我々が注視しているのは福島高校野球注目選手のボールの回転数やリリースポイントのブレの少なさ、そしてピンチでのマウンド上の佇まいです。数字に表れない“勝てる投手の資質”を見極めるには、現場で一球ごとの呼吸を見るしかありません」
しかし、ネット掲示板である爆サイ福島高校野球などに目を向けると、「あいつはスピードガンで130キロ台しか出ていないから過大評価」「練習試合で〇点取られたからドラフト候補ではない」といった表層的な議論が延々と繰り返されています。また、イニング間に投じられる福島高校野球速報のレスを見ても、わずか数秒の遅れや誤認をめぐって口論が勃発するなど、現地観戦の牧歌的かつ緊迫感のある雰囲気とは大きく乖離したギスギスした熱量が漂っています。
スタンドに駆けつける保護者や一般の野球部OBに話を聞くと、「ネットに書かれている怪情報を見ないように子どもに言い聞かせている」「親族の実名が掲示板に晒され、精神的に追い詰められた家庭もある」という深刻な証言も聞かれます。観客席の熱い声援の裏で、匿名空間に吐き出される無責任な言葉の刃が高校生とその周囲を脅かしている現実は見過ごせません。