日常会話において「春眠暁を覚えず」は、「春は朝起きるのが億劫でつい寝坊してしまう」「だらだらと二度寝をしてしまう」といった文脈で用いられがちです。しかし、故事成語としての春眠暁を覚えずの本来の意味は、単なる怠惰や朝寝坊を正当化する言葉ではありません。
漢字を一文字ずつ丁寧に分解すると、その本質が見えてきます。「春眠」は春の夜の心地よい眠り、「暁」は夜明け・明け方、「覚えず」は気付かない・目が覚めないを指します。つまり、「春の眠りはあまりにも心地よく安らかで、夜が明けたことにも気がつかないまま朝を迎えてしまう」という、春特有の情趣と充足感を素直に詠んだ表現なのです。
詩の語り手は、遅刻して慌てふためいているわけでも、自己嫌悪に陥っているわけでもありません。鳥のさえずりでふと目を覚まし、布団の中でゆったりと春の訪れを五感で味わっている優雅な朝のワンシーンを描写しています。