居酒屋や寿司屋でイカの足を注文する際、誰もが日常的に使う「ゲソ」という言葉。この語源は、日本の伝統的な風俗と数え方の文化に由来しています。
江戸時代、寄席や芝居小屋、遊郭などでは、客が脱いだ履き物を預かる専門の係を「下足番(げそばん)」と呼びました。下足番は、客が帰る際に素早く履き物を取り出せるよう、下足札を使って管理していましたが、混雑時には1足ずつ管理するのではなく、10足(10ペア)を一括りにして紐で束ねて整理していました。この「下足(げそ)」が10本を一組とするイカの足の形状と重なり、市場や職人の間で「下足=ゲソ」と呼ばれるようになったのが定説とされています。
現代の食文化においては、「イカ1パイ」に対して「ゲソ1つ」と数えられることが多く、10本の腕が束になった状態そのものをひとつの食材単位として認識しています。料理の世界でも、胴体とゲソでは加熱時の収縮率や食感、旨味成分の出方が大きく異なるため、それぞれ別々の調理法で活かされています。