既存の旅番組といえば、美しい観光名所を巡り、地元の上品な郷土料理に舌鼓を打つのが定番の構成だった。しかし、藤村が手掛けた旅は常にその真逆を突き進む。目的地にたどり着けない焦燥感、まずい料理に悶絶する表情、過酷な移動の果てに訪れる虚無感。藤村は、予定調和を徹底的に嫌悪した。
「旅の面白さは、ハプニングに直面した人間が剥き出しにする本性にこそある」。藤村が貫いたこの哲学は、視聴者にとってのリアリティそのものだった。作り手が敷いたレールをなぞるだけのコンテンツに視聴者が飽き足らなくなっていた時代に、藤村の「行き当たりばったり」は最高峰のドキュメンタリーとして受け入れられたのである。