大手企業の人事研修データやビジネス文書の校正現場から報告される事例を見ると、現代のビジネスパーソンが最も陥りやすいのが「丁寧さを求めすぎるあまり生じる冗長化」です。
典型的な事例が、ビジネスメールにおける正しい表現と誤用すれすれの表現の境界線です。
「ご提示いただいた条件で対応することは可能です」という一文は文法的に誤りではありません。しかし、現場の校閲デスクや管理職層を対象としたコミュニケーション調査では、この表現に対して「遠回しで消極的な印象を受ける」「引き受ける気があるのか測りかねる」といった所感が寄せられる傾向があります。
これは前述の通り、「〜することは」という形式名詞+係助詞の構造が「譲歩(やろうと思えばできるが、条件や不満がある)」という潜在的なニュアンスを含んで響いてしまうためです。無条件で引き受ける意思を示す場面では、「ご提示いただいた条件で対応可能です」または「対応いたします」と言い切る方が、明確かつ信頼感のある伝達になります。
逆に、「技術的に対応することは可能ですが、納期の調整が必要です」といった条件付きの承諾・部分肯定の場面であれば、「ことは」の持つ譲歩のニュアンスが正確に機能します。