動物病院の診察室で「うちの子ももう12歳なんです」と語る飼い主に対し、獣医師がまず伝えるのは「人間なら立派なシニア世代ですね」という現実です。一般的に広く支持されている猫の年齢人間換算の計算式では、「最初の2年で24歳になり、以降は1年ごとに4歳ずつ歳をとる」という公式(24 + (猫の年齢 − 2) × 4)が用いられます。この計算に基づくと、12歳の猫は人間でいう約64歳に相当します。
64歳といえば、人間であれば退職を意識し、足腰の違和感や代謝の衰え、内臓疾患の定期検査が欠かせなくなる年代です。猫の体内でも全く同じ現象が起きています。筋肉量が徐々に落ち始め、消化吸収能力が衰え、血管や関節の柔軟性が失われていきます。
しかし、猫は被毛に覆われているため、シワや白髪といった外見の変化が人間ほどダイレクトに現れません。さらに、野生時代の名残から「体調不良を隠す」本能が骨の髄まで染み付いています。飼い主が「まだまだ見た目は若々しいから大丈夫」と過信してしまう背景には、この進化が生んだ外見と体内年齢のギャップが存在します。