物語の最大の謎である「丹沢連続殺人事件」の真犯人であり、ヒロインの麻美(演:北川景子)と恋人の富田誠(演:田中圭)を監視・翻弄し続けた黒幕は、富田が持ち込んだパソコンのセキュリティ対策を親身に引き受けていたシステムエンジニア、浦野善治(演:成田凌)でした。
映画中盤まで、物語は巧妙なミスリードを展開します。富田の大学時代の先輩でIT企業役員の小柳守(演:バカリズム)や、麻美に執着を見せるエリート商社マンの武井雄太(演:要潤)に怪しい影を落とし、観客の視線を真実から意図的に逸らし続けました。しかし、浦野こそがタクシーで富田のスマホを拾い、あらかじめ悪質なスパイウェア「M偵」を仕込んで返却した張本人でした。浦野はスマホのインカメラ、マイク、GPS、SNSアカウントを完全に掌握し、富田と麻美の一挙手一投足を盗聴・盗撮していたのです。
浦野を突き動かしていた戦慄の犯行動機は、「母親から受けた凄惨な虐待トラウマ」と「黒髪ロングの美女に対する倒錯した執着」でした。幼少期、美しい黒髪を持つ母親から激しいネグレクトと虐待を受け、暗い押し入れに閉じ込められて育った浦野は、母親への憎悪と激しい渇望を同時に内面に植え付けられました。その歪んだ精神は成人後、ネット上で黒髪ロングの女性を物色しては拉致し、母親の面影を重ね合わせながら監禁・殺害して丹沢の山中に埋めるという猟奇的凶行へとエスカレートしていったのです。
しかし、本作最大の衝撃は浦野の正体だけに留まりません。事件に巻き込まれた被害者であるはずの「稲葉麻美」自身が、誰にも言えない致命的な過去を抱えていました。麻美の本名は「山本美奈代」であり、本物の稲葉麻美ではありませんでした。
かつて美奈代は、同棲していたホストの借金数千万円を背負わされ、自己破産すらできない絶望的な底辺生活を送っていました。その窮状を見かねた本物の稲葉麻美から「私の名前を使って人生をやり直せばいい」と持ちかけられ、美奈代は整形手術を受けて麻美の顔と戸籍を手に入れたのです。一方の本物の麻美は、重度の精神的疲弊と自責の念からダム湖へ身を投げて自死していました。浦野が麻美の個人情報をハッキングした際、小学校の卒業アルバムの顔写真と現在の顔が一致しないこと、さらに本物の麻美の実家がすでに娘の死亡届を出そうとしていた矛盾に気づいたことで、この身代わり劇が白日の下に晒されることになりました。