カバラの実践者たちは古来、この樹をただ眺めるだけでなく、強烈な意識変容の装置として用いてきました。代表的な技法が「パスワーキング(小径歩行)」と「中央の柱の瞑想法(ミドル・ピラー・リチュアル)」です。パスワーキングは、マルクト(現実世界)からイエソド、ティファレトへと、タロットの象徴画を鍵(キー)としてトランス状態で樹を逆登りし、深層心理の深淵を探るアクティブ・イマジネーション(積極的想像力)の手法です。
現代のスピリチュアル界隈や瞑想コミュニティの体験談を精査すると、「自身の思考の偏り(過剰な峻厳=自己批判、あるいは過剰な慈悲=境界線の喪失)が視覚的に把握できた」「感情の暴走をホド(客観的知性)の力で俯瞰できるようになった」といった自己統制力の向上が報告されています。現代カバラ思想の最新解釈においては、オカルト的な魔術儀式としてではなく、認知行動療法やトランスパーソナル心理学に近いメンタルモデルとして受容されています。
ただし、現場の専門家からは強い警告も発せられています。自己の基盤(マルクト=日常生活や肉体感覚)がおろそかなまま、上位のセフィラや深淵(アビス)の瞑想に耽溺すると、精神的なグラウンディングを失い、現実逃避や肥大した自己愛に陥る「スピリチュアル・バイパス(霊的逃避)」を引き起こす危険性があります。現実の生活をしっかりと営むこと(マルクトの確立)なしに、上位の神聖さは獲得できないというのが、カバラの最も現実主義的な鉄則です。