SNSや医療Q&Aコミュニティを調査すると、「歯が激痛で我慢できず受診した結果、何本も神経を抜かれたが全く治らなかった」「最終的に抜歯されたのに、抜いた場所がまだ痛む」といった生々しい悲鳴が多数確認できます。これは決して極端な怪談ではなく、非歯原性歯痛を見逃した医療現場で実際に生じている悲劇です。
ある30代のITエンジニア男性は、過酷な納期に追われていた時期に左下奥歯の激痛を発症しました。夜も眠れないほどの痛みに耐えかねて飛び込んだ歯科医院で「神経の炎症かもしれない」と告げられ、歯を削って神経を抜去。しかし翌日も痛みは収まらず、隣の歯まで痛みが拡大しました。複数のクリニックを転々とした後、大学病院の口腔顔面痛外来で下された診断は「過度なストレスによる側頭筋のトリガーポイントと重度のTCH」でした。
歯科医師としても、患者が「ここが激しく痛むから今すぐ削ってくれ」と強く懇願した場合、痛みの除去を最優先に考えて外科的処置を選択してしまう心理的バイアスが働きます。しかし、一度削った歯や抜いた神経は二度と元には戻りません。不可逆的な治療に踏み切る前に、筋肉や神経由来の疾患を疑うステップが極めて重要な防波堤となります。