アフタヌーンティーの象徴である3段スタンドは、単にテーブルの省スペース化を図るためだけに作られたわけではありません。皿が配置される高さには、食事としての味覚設計が緻密に組み込まれています。基本となる三段スタンドの食べる順番は、「下段(セイボリー)→中段(スコーン)→上段(ペストリー・スイーツ)」という下から上へ昇る流れが絶対の基本とされています。
下段から食べる決定的な理由は、アフタヌーンティーが西洋料理のフルコースを1つのスタンドの上に凝縮したスタイルだからです。下段に配置されるサンドイッチやキッシュなどの「セイボリー(塩気のある軽食)」は前菜の役割を果たします。空腹の状態でいきなり糖分の高い上段のケーキを口にすると、血糖値が急上昇して舌の感覚が鈍り、繊細な紅茶の香りや後続の料理の風味を正確に捉えられなくなってしまいます。塩味と酸味で唾液の分泌を促し、胃を整えてから炭水化物、そして甘味へと進める設計は、生理学的にも理にかなったアプローチなのです。
また、セイボリーを食べる順番にも細やかな配慮が存在します。一般的なホテルアフタヌーンティーでは、きゅうりやサーモンなどの冷製オープンサンドから始め、次にパテやミニバーガー、温かいキッシュなど味の濃いものへと進めるのが理想的です。特にきゅうりのサンドイッチは、19世紀の英国貴族社会において「新鮮な野菜を温室で栽培できる財力の象徴」とされた歴史があり、敬意を表して真っ先に味わう習慣が受け継がれています。