山道を進んだ奥地、静寂に包まれた森の中に聳え立つ社殿を目にした者は、一様に息を呑みます。ネット上で異彩を放つこの神社は、一体どのような経緯でこの地に建てられたのでしょうか。歴史の糸を解きほぐすと、島根県出雲地方に根付く古代の信仰と、昭和から平成にかけて関西地方で展開された熱心な崇敬活動の結びつきが浮かび上がってきます。
本源となるのは、島根県出雲市平田町に鎮座する式内社「久多美神社(くたみじんじゃ)」です。延喜式神名帳にもその名を残す由緒正しき古社であり、出雲国造ゆかりの地として知られています。関係者の証言や当時の建立記念碑文の記録によると、昭和後期、関西在住の篤志家や信徒有志が集い、「関西の地にも出雲の偉大な神威を仰ぐ拠点を」という祈念のもと、本家から御分霊を迎えて社殿を整備したのが関西出雲久多美神社の歴史と由緒の原点です。
祀られている主祭神は、国土経営と縁結びの神として名高い大名持命(大国主大神)をはじめとする出雲の神々です。境内に掲げられた由緒板や当時の資料を紐解くと、人々の現世安寧、産業発展、家内安全を願う正当な出雲信仰の社として出発した事実が記録されています。決して怪奇なルーツを持つ施設ではなく、篤い信仰心によって巨費を投じて建立された本格的な神殿建築なのです。