赤ちゃんの体内において、ビタミンKは血液を固める凝固因子を生成するために欠かせない必須栄養素です。しかし、生まれたばかりの新生児は胎盤を通過するビタミンKが極めて微量であること、腸内細菌叢が未熟で自らビタミンKを合成できないこと、さらに母乳に含まれるビタミンK含有量が粉ミルクに比べて極端に少ないことなど、複数の生理的弱点を抱えています。
このビタミンK不足によって引き起こされる重篤な疾患が新生児ビタミンK欠乏性出血症予防の主眼となる「ビタミンK欠乏性頭蓋内出血」です。発症すると脳出血によって痙攣や意識障害を引き起こし、救命できても運動障害や発達遅滞などの重い後遺症を残すリスクがあります。日本小児科学会や日本周産期・新生児医学会などの関連学会による合同委員会が策定したガイドラインでは、かつての「出生後・生後1週間・1か月健診」の計3回投与方式から方針を大きく転換しました。
現在定着している基準がK2シロップ3ヶ月12回投与法です。出生直後からK2シロップいつまで週1回飲ませるべきかといえば、生後3か月(約12週〜13週齢)を迎えるまで、毎週決まった曜日に計11〜13回前後投与し続ける体制が全国の産科・小児科で標準化されています。母乳育児の推進に伴い、生後1か月以降に発症する「遅発性ビタミンK欠乏性出血症」をゼロに抑え込むための科学的根拠に基づいた医療施策です。