ガソリンスタンドで自動車に給油する感覚で草刈り機を扱っていると、2サイクル混合ガソリン劣化の恐ろしさを見失いがちです。自動車用のレギュラーガソリンとは異なり、草刈り機に使われる混合燃料は、ガソリンと2ストローク用エンジンオイルを25:1や50:1といった厳密な比率で希釈混合した非常にデリケートな液体です。
石油元売り各社の物性データによれば、外気に触れた混合ガソリンはわずか1ヶ月程度で揮発成分が蒸発し、酸化が急速に進みます。劣化したガソリンは無色透明に近いピンク色から、濃い琥珀色や褐色へと変色し、ツンとする独特のワニス臭(古くなったニスのような酸っぱい臭い)を放ちます。
この劣化した燃料を「もったいないから」とタンクに入れたまま冬を越すと、キャブレター内部の真鍮製極小ノズル(ジェット)の中でガソリンが乾燥・ガム化し、直径0.5mmにも満たない穴を塞いでしまいます。これが機械的なキャブレター詰まりの正体です。こうなると、市販のキャブレタークリーナーを吹き込むか、本体を分解して超音波洗浄や薬品漬け置きを行わない限り、燃料が吸い上げられず永久にエンジンは始動しません。シーズン終了時には必ずタンクを空にし、エンジンが自然停止するまでアイドリングさせてキャブ内の燃料を完全に使い切る「ガス欠保管」を徹底することが最大の予防策です。