世界で最も飲まれているシングルモルトの座に君臨するグレンフィディックですが、ウイスキー愛好家が「12年」を日常酒の傑作と呼ぶ一方で、「15年」に対しては特別な敬意を払います。その最大の秘密は、シェリー酒の熟成技法に着想を得て1998年に導入された「ソレラシステム(Solera Vat)」にあります。
グレンフィディック15年 ソレラリザーブの製造プロセスは、一般的なスコッチの常識を覆す緻密さを誇ります。まず、熟成樽として以下の3系統の異なる樽で最低15年以上熟成させた原酒を用意します。
・ヨーロピアンオークのオロロソシェリー樽原酒(濃厚なレーズン、スパイス、重厚なタンニンを付与)
・アメリカンオークのアメリカンバーボン樽原酒(バニラ、トフィー、柔らかな甘みを形成)
・ホワイトオークの新樽原酒(芳醇なウッディネス、シナモン、力強い骨格を補強)
これら3つの異なる原酒を、巨大なオーク製の「ソレラバット(大樽)」へと注ぎ込みます。驚くべきはここからです。ボトリングの際、この大樽の中身を絶対に半分以上残し、空にすることは決してありません。半分を取り出して瓶詰めしたのち、減った分だけ新しい15年熟成原酒を補充し、常に過去の原酒と新しい原酒を調和させ続けるのです。つまり、現在私たちが手にするボトルの中には、1998年の稼働開始当初から蓄積され続けた原酒の記憶が途切れることなく宿っています。
グラスに注ぐと、色合いは深みのある温かなゴールデン。香りを取れば、シェリー樽由来のダークレーズンとハチミツの芳香が立ち上り、奥から焼きたてのトフィーやシナモン、マジパンを思わせる豊かなニュアンスが重なります。口に含むと驚くほどシルキーで、角の取れた円熟味がありながら、新樽由来のスパイシーさが心地よいアクセントとして舌を引き締めます。この「継ぎ足しの美学」が生み出す均一性と複雑怪奇な重層構造こそが、テイスターたちを唸らせてやまない真の理由です。