ぐり茶とは?煎茶との決定的な違いと伊豆名産の真相・淹れ方を徹底解説

ぐり茶とは?煎茶との決定的な違いと伊豆名産の真相・淹れ方を徹底解説

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「茶処の静岡なら本山や牧之原が有名なのに、なぜ伊東市でぐり茶なのか?」という疑問を抱く人は少なくありません。この歴史的背景には、昭和初期の海外貿易と、高度経済成長期の観光ブームが交錯した産業ドラマが存在します。

大正末期から昭和初期(1930年代)、旧ソ連(カフカス地方)や北アフリカ諸国では、中国産の釜炒り緑茶(珠茶・ガンパウダー)が広く嗜好されていました。これに対抗すべく、日本の茶輸出振興策として開発されたのが、蒸し製でありながら中国茶に似た丸い形状を持つ「蒸し製玉緑茶」でした。当時の静岡港や清水港から盛んに輸出され、外貨獲得の切り札となったのです。

しかし第二次世界大戦や国際情勢の変化により輸出市場が縮小。そこで活路を見出したのが、昭和20年代後半から急速に発展した伊豆半島でした。1952年創業の「ぐり茶の杉山」をはじめとする静岡県伊東市のぐり茶問屋や茶商たちが、この味わい深い玉緑茶を国内の消費地に向けてローカライズする戦略を打ち出します。

当時、伊東温泉や熱海温泉には全国から年間数百万人規模の観光客が訪れていました。温泉旅館の客室係や女将たちが直面していた課題は、「多忙なオペレーションの中で、熱湯をそのまま急須に入れても渋くならず、誰が淹れても鮮やかな色と甘みが出るお茶はないか」という点でした。この現場ニーズに、精揉を省いたぐり茶の特性が見事に合致したのです。

旅館のウェルカムティーとして口にした宿泊客が「こんなに甘くて濃い緑茶は飲んだことがない」と感動し、駅前商店街や旅館売店でお土産として指名買いするサイクルが定着。こうして伊豆名産ぐり茶という地域ブランドが確固たる地位を築くに至りました。

なお、玉緑茶のもう一つの本場として知られるのが九州の嬉野茶玉緑茶(佐賀県嬉野市)です。嬉野では伝統的な釜炒り製玉緑茶(乾煎りによる香ばしい「釜香」が特徴)と蒸し製玉緑茶の双方が継承されているのに対し、伊豆のぐり茶は「深蒸し(通常の2〜3倍の時間蒸す)」を徹底し、粉末に近い細かな茶葉と鮮緑色の濃厚なコクを追求した点に明確な個性があります。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。