未上場企業の経営者やスタートアップの創業者にとって、出口戦略の策定は創業初日から突きつけられる最重要課題です。その二大巨頭となるのが、自社株を株式市場に公開して公募・売出を行うIPOと、第三者の企業やファンドに株式を譲渡するM&Aです。両者の力学は根本から異なっており、自社の事業特性と市場環境を見誤った選択は、取り返しのつかない悲劇を生みます。
近年、特にスタートアップのイグジット戦略における地殻変動が顕著です。以前のように「赤字垂れ流しでも売上トップラインさえ伸ばせばグロース市場に上場できる」という安易なIPO信仰は完全に崩壊しました。機関投資家の厳しい選別眼により、黒字化の蓋然性や強固なユニットエコノミクスが厳格に審査されるようになった結果、より現実的かつ柔軟な資本回収手段としてM&Aを選択する起業家が激増しています。
同時に、後継者不足に悩む中堅・中小企業においては、親族外承継の切り札として事業承継とMBOの進め方が大きな論点となっています。経営陣が自ら金融機関や投資ファンドから資金を調達して自社株を買い取るMBO(マネジメント・バイアウト)は、社外の第三者に身売りすることなく経営の独立性を維持できるため、長年苦楽を共にした従業員の雇用を守りたい創業オーナーにとって有力な出口戦略として定着しつつあります。