1983年に「麻里ちゃんは、ヘビーメタル。」という鮮烈なキャッチコピーでデビューした浜田麻里にとって、ポップス性の強いCMタイアップ曲の制作は決して平坦な道のりではありませんでした。当時のロックシーンでは「歌謡曲やCMに迎合することは魂を売ること」とみなす風潮が根強く、コアなメタルファンからの反発を恐れる葛藤が少なからず存在していたといいます。
そのプレッシャーを打破したのが、作曲を担当した名匠・大槻啓之の手腕と、浜田麻里本人が紡ぎ出した真摯な歌詞でした。大槻啓之は、アメリカ西海岸の洗練されたAORやメロディック・ハードロックの要素を巧みに注入し、ハードなドライヴ感と大衆を惹きつける極上のポップネスを見事に融合させたトラックを構築しました。
浜田麻里自身が手がけた歌詞は、単なる夏のバカンスソングにとどまりません。タイトルである「Return to Myself(自分自身に還る)」という言葉には、他人の目や世間の枠組みに縛られず、飾らないありのままの自分を愛そうという力強いメッセージが込められています。「涙も 笑顔も ぜんぶ抱きしめて、本当の自分を取り戻す」というテーマは、バブル期の高揚感とプレッシャーの中に生きていた女性たちのみならず、現代のリスナーの心にも深く響く普遍性を持っています。