長年、村重は「戦国一の卑怯者」、だしは「哀れな犠牲者」という単純な構図で語られがちでした。しかし、近年の歴史研究では、戦国武将としての生き残りをかけた極限状態の戦略や、武家の女性としての誇りという多角的な視点から再検証が進んでいます。
村重は個人的な保身のみで逃亡したのではなく、大名家としての存続をかけた起死回生の賭けに出た結果、読みを誤り破滅へと突き進んでしまったと考えられます。一方のだしもまた、ただ運命に泣き寝入りしたのではなく、武家の誇りを胸に毅然と死を受け入れた凛とした女性でした。
凄惨な六条河原の悲劇は、信長の冷徹な恐怖支配の頂点を示す事件であると同時に、戦国の極限状況下で際立った一人の女性の精神美を後世に刻みつけることとなりました。