本作のメガホンを取った李相日監督といえば、『フラガール』や『悪人』でも知られる日本映画界屈指のリアリストです。役者に表面的な嘘の芝居を一切許さず、感情の根源が湧き出るまで徹底的にテイクを重ねる指導スタイルで知られています。
当時17歳前後だった広瀬すずに対しても、監督の要求は容赦のないものでした。撮影前のオーディションの段階から役の深層心理について問い詰められ、現場に入ってからも「感情が嘘に見える」「形だけで演じるな」と厳しい言葉を浴びせられる日々が続きました。
沖縄の強烈な日差しが照りつけるロケ地で、泉という少女が抱える孤独やトラウマ、そして言葉にならない感情を身体全身で表現するため、広瀬は逃げ場のない精神状態にまで追い込まれました。後年のインタビューでも、当時の心境を「毎日現場に行くのが怖かった」「自分の無力さを突きつけられた」と率直に振り返っています。しかし、その妥協なき演出があったからこそ、作り物ではない本物の涙と感情の爆発がフィルムに刻み込まれました。