余因子の知識を総動員して行うのが「逆行列の導出」です。ここで大学の定期試験や資格試験において、受験者の約半数が失点する典型的な罠が存在します。それが「余因子行列の転置忘れ」です。
余因子を行列の形に並べたものを「余因子行列(Adjugate matrix / $\widetilde{A}$)」と呼びますが、逆行列の公式における余因子行列は「元の成分配置から行と列を入れ替えた(転置した)もの」で定義されます。
【余因子行列による逆行列の公式】
$A^{-1} = \frac{1}{|A|} \widetilde{A} = \frac{1}{|A|} \begin{pmatrix} \tilde{a}_{11} & \tilde{a}_{21} & \tilde{a}_{31} \\ \tilde{a}_{12} & \tilde{a}_{22} & \tilde{a}_{32} \\ \tilde{a}_{13} & \tilde{a}_{23} & \tilde{a}_{33} \end{pmatrix}$
成分のインデックスに注目してください。1行目の並びが「$\tilde{a}_{11}, \tilde{a}_{12}, \tilde{a}_{13}$」ではなく、縦方向の余因子が横に並ぶ「$\tilde{a}_{11}, \tilde{a}_{21}, \tilde{a}_{31}$」になっている点が最大のポイントです。
ミスを完全に防ぐためには、以下のルーティンを徹底することをおすすめします。
- まず全成分の余因子 $\tilde{a}_{ij}$ を通常通り計算して書き出す。
- 求めた余因子をそのまま並べた行列を作り、その右肩に転置記号「${}^T$」を明記する。
- 最後に行と列をひっくり返して行列式 $|A|$ で割る。
この3段階を踏むだけで、符号ミスや転置の入れ忘れによるケアレスミスを根絶できます。