犬が苦手な人に対面したとき、犬が見せる反応は大きく二つに分かれる。露骨に距離を置いて避けるか、あるいは静かにすり寄っていくかだ。一見すると相反するこのふたつの挙動だが、根底にあるメカニズムは実に合理的である。
まず「避ける」行動の裏にあるのは、人間が発する微細なストレス信号の察知だ。犬嫌いの人が緊張したときに分泌する汗の成分や、硬直した筋肉、不自然に早くなる脈拍を、犬は鋭い嗅覚と観察眼で見逃さない。警戒心が強い個体は「この人は緊張していて予測不能だ」と判断し、自ら危険を回避するために背を向ける。
一方で、なぜか「近寄ってくる」ケース。これこそが多くの人を困惑させる最大の謎だ。最新の動物行動学が解き明かしたところによれば、犬にとって「直視されないこと」は攻撃性のなさ、すなわち究極のリラックスサインを意味する。犬嫌いの人が恐怖のあまり視線を外し、体を縮める姿は、犬の目には「自分に全く敵意がなく、礼儀正しい人間」と映る。結果として、確認のために安心して歩み寄ってしまうのだ。