戦闘後、無一郎の意識は三途の川の境界で、かつて鬼に殺害された双子の兄・有一郎と巡り合います。そこで交わされた対話は、『鬼滅の刃』全編を通じても屈指の名場面として知られています。
有一郎は「お前だけでも助かってほしかった」「こんなところで死んでどうするんだ、無駄死にじゃないか」と涙を流して無一郎を突き放そうとします。幼少期、情け深かった無一郎を守るためにあえて冷徹な言葉を浴びせ続けていた有一郎の、歪で深い愛情の表れでした。
しかし、記憶を取り戻し、仲間と共に戦った無一郎の返答は、迷いのない澄み切ったものでした。
「僕は幸せになるために生まれてきたんだ」
「仲間のために命を懸けたことに後悔はない。誰にも僕を無駄死にだなんて言わせない」
14年という短い生涯の中で、失った記憶を取り戻し、炭治郎たちかけがえのない仲間と出会い、自分の意志で誰かを守るために命を使い果たした。有一郎は「わかってるよ」と無一郎を抱きしめ、二人は涙の中で真の和解を果たしました。この最期の言葉は、単なる悲劇の犠牲者ではなく、自己の尊厳を完全に確立した少年の誇り高い魂の宣言でした。