1980年代末、日本中を駆け巡った報道はあまりにも衝撃的だった。芸能界の第一線で輝くトップ女優が、未婚のまま妊娠し、渡米して出産する――。当時は今以上に「結婚」という形式が重視されていた時代であり、彼女に向けられた風当たりの強さは想像を絶するものがあった。
しかし、萬田久子は決して背を向けなかった。世間からのバッシングを正面から受け止め、母として我が子を守り抜く道を選択。アメリカ・ニューヨークの地で産声を上げた長男を抱きかかえたとき、彼女はひとりの強い母親としての人生を歩み始めた。守るべき存在ができたことで、彼女の演者としての奥行きもまた、格段に増していくこととなった。