ネット上のQ&Aサイトや一部のビジネス系ブログでは、まことしやかに「若しくはは口語的、又はは文語的」「現代では『若しくは』は廃止された」といった根拠のない誤解が散見されます。調査報道の視座からこれらをファクトチェックすると、全くの虚偽であることが明白です。
盲点となりやすい代表的な3つの誤解を整理します。
誤解①:「若しくは」は使わずに、すべて「又は」で統一するのが最新のマナーである
真相:階層がフラットであるなら「又は」だけで統一すべきですが、明確なグループ分けが存在する文脈で「若しくは」を排除すると、どの条件とどの条件がセットなのか判別できなくなります。
誤解②:3段階以上の階層がある場合、別の接続詞が存在する
真相:法令上、選択肢の階層が3段階以上になる場合でも、新たな接続詞は登場しません。一番大きなグループの接続にのみ「又は」を使い、中間グループおよび最小グループの接続にはすべて「若しくは」を重ねて使用するのが法制執務の鉄則です。このとき、読点(、)の打ち方で係り受けをコントロールします。
誤解③:日常のビジネスメールでも厳格に使い分けないと失礼にあたる
真相:メールやチャットで「若しくは」と「又は」の階層に固執しすぎると、かえって過度に形式張った印象を与え、相手のスムーズな理解を妨げます。法的拘束力のない日常の連絡では、誰もが一読で理解できるシンプルな言い回しを選ぶのがスマートです。
【プロの結論】弁護士が教える使い分け詳細まとめと推奨される利用基準
企業の顧問弁護士や法務担当責任者が口を揃えて強調するのは、「目的と読み手に応じた表現の使い分け」です。何が何でも法律用語を押し通すのも愚行であり、法的文書で曖昧さを許容するのも致命傷となります。
【このルールを厳格に適用すべき場面:おすすめできる対象】
・秘密保持契約書(NDA)、売買基本契約書、株主間契約などの法的拘束力を持つ文書の起草・レビュー
・企業の就業規則、定款、コンプライアンス規程の制定
・行政機関への許認可申請書や正式な抗辯文書の作成
【厳格な使い分けをあえて避けるべき場面:おすすめできない対象】
・カスタマーサポートの利用規約要約や、一般顧客に向けたWebサイトのFAQ
・社内コミュニケーション(SlackやTeams、一般的な業務引き継ぎメモ)
・即時性が求められる広報リリース(箇条書きへの置き換えが最適解)
文章におけるルールとは、単なる知識のひけらかしではなく、受け手との間にある心理的バウンダリーを守り、不要な解釈の摩擦を防ぐための防護壁です。守るべき場面と崩すべき場面を見定めることこそ、現代のプロフェッショナルに求められる真のリテラシーと言えます。