大学進学を選ばず、度会隆輝が門を叩いたのは社会人野球の名門・ENEOS野球部だった。この選択には、ルール上の明確な戦略と彼の覚悟が秘められている。NPBのドラフト規定において、高卒で大学へ進学した場合、指名対象となるまでに4年の歳月を要する。一方、高卒で社会人チームに進んだ場合は、最短3年でドラフト解禁を迎える。一刻も早くプロの世界へ踏み出したい度会にとって、この「1年の差」は極めて大きい意味を持っていた。
また、社会人野球のレベルは大学野球の上位層を上回る実力者がひしめく厳しい世界だ。木製バットへの対応、元プロや成熟した大人の投手陣との対峙は、度会の打撃技術を飛躍的に研ぎ澄ませた。厳しい企業野球の競争環境こそが、自分を最も過酷に鍛え上げる道だと直感していたのだ。大学という守られた環境ではなく、結果がすべての社会人リーグで結果を出すことこそが、指名漏れの悔しさを晴らす唯一の解だった。