日本人の学習者から頻繁に寄せられる疑問の一つに、「なぜ韓国ドラマでは成人男性や大人の女性が父親をアッパと呼んでいるのか?」というものがあります。日本では小学校高学年から中学生頃にかけて「パパ」から「お父さん」へ移行するのが一般的であるため、大人がアッパと呼ぶ姿に違和感を覚える人が少なくありません。
しかし、韓国の言語文化を現地で観察すると、成人後も家庭内では「アッパ」と呼び続けるのがごく一般的な風景であることが分かります。韓国国立国語院の意識調査や語用論の研究においても、家族内の親密度を示すマーカーとして「アッパ」が極めてポジティブに機能していることが示されています。
韓国人男性が「アッパ」から「アボジ」へ呼び方を変える主な契機は、年齢そのものよりも社会的なライフステージの転換点にあります。
- 兵役(軍隊)への入隊:上下関係と敬語が徹底される軍生活を経験することで、家庭内でも自然と「アボジ」と言い換える男性が増加します。
- 結婚と独立:自らが一家の長となったり配偶者を迎えたりする段階で、大人の責任感として「アボジ」と呼ぶようになるケースが目立ちます。
- 外部の人間に親を紹介する場:職場の上司や友人に父親を話す際、対外的マナーとして「アボジ」を選択します。
財閥系や厳格な名門家を描いた韓国ドラマで息子が父親を終始「アボジ」あるいは「アボニム」と呼ぶのは、その家系の格式や心理的距離感を演出するための脚本的意図です。一般的な現代家庭では、何歳になっても父親の前では「アッパ」と呼んで親孝行な甘えを見せる光景が日常的です。