なぜ人間は目の前にチャンスが訪れたとき、素早く手を伸ばすことができないのか。最新の行動心理学は、その原因を根性論ではなく「脳の進化プロセス」に求めている。
人間には「現状維持バイアス」と「損失回避バイアス」という強い認知の偏りが存在する。未知の機会に飛びつくメリットよりも、失敗した際の痛みを約2倍も大きく評価してしまう傾向があるのだ。この心理的ブレーキが働き、脳がリスク計算に没頭している数秒間のうちに、カイロスは足の翼を羽ばたかせて走り去ってしまう。
近年おこなわれた意思決定スピードと成果に関する心理実験によれば、優れた成果を出す人物は「不確実な状況下での迷い(マイクロ決断レイテンシー)」が平均的な人物の3分の1以下であることが判明した。彼らは直感を信じているのではなく、事前に行動基準を定め、脳の躊躇を物理的にカットしているのだ。