江戸の浮世絵で咲き誇ったこの身体美学は、昭和の映画黄金期において銀幕へと移植された。その立役者となったのが、日本のエンターテインメント界を牽引した東映である。戦後の日本映画界において、東映が手掛けた一連の時代劇や任侠映画は、背中に壮大な意匠を背負ったヒーロー像を銀幕に定着させた。
スクリーンの大画面で躍動するスターたちの背中には、国芳の浮世絵を思わせる凄みが宿っていた。着物を諸肌脱ぎになり、牙を剥く龍や唐獅子牡丹の彫り物を露わにして悪に立ち向かう――その美学は、時代劇の殺陣や任侠映画のクライマックスシーンを華々しく彩り、観客を熱狂の渦へと巻き込んだ。映像表現としての『刺青水滸伝』の精神は、映画会社の職人集団によって精緻に磨き上げられていったのである。