SNSや医療相談の現場でしばしば話題にのぼるのが、「抗がん剤をやめたら驚くほど元気になった」という体験談です。抗がん剤やめたいという切実な思いを抱え、実際に治療を中止した患者の周辺で、なぜこのような現象が起きるのでしょうか。
腫瘍内科医や緩和ケア認定看護師らの臨床現場における証言によると、この「回復」はがんそのものが消失したわけではなく、抗がん剤の細胞毒性から身体が解放されたことによる一時的な全身状態の改善であるケースが極めて多く見られます。抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えるため、投与中は常に身体が極度の炎症や骨髄抑制、内臓疲労と戦っています。投薬を止めることで、本来持っていた基礎体力が一時的に戻り、食欲が回復し、笑顔で外出できるようになるケースは珍しくありません。
公の場で行われたがんサバイバーの特番インタビューでも、「薬をやめて数週間後、久しぶりに食事を美味しいと感じ、孫と公園を散歩できた。あの数週間を持てただけで、やめる決断をして本当によかったと思えた」という生々しい告白が語られています。しかし、この小康状態は永遠に続くわけではありません。休薬によって病勢が再び進行するリスクと、苦痛のない平穏な日常を取り戻す価値をどう天秤にかけるかが、患者と家族にとって最大の試練となります。