1990年代前半のバンドブームにおいて、L'Arc〜en〜Cielが選んだメジャーデビューの戦略は極めて異例でした。当時主流だった8cm短冊型CDシングルではなく、1994年7月1日にビデオシングル(VHS)『眠りによせて』を先行リリースし、そのわずか2週間後の7月14日にメジャー1stアルバム『Tierra』を発表するという大胆なプロモーションを展開したのです。
当時の音楽雑誌の記録や関係者の証言によると、この戦略は「単なる音源の提供にとどまらず、バンドが持つ圧倒的なヴィジュアルセンスと映像美の世界観をパッケージとして提示する」という明確なブランディング戦略に基づいたものでした。激しいビートやダークな世界観を前面に押し出すバンドが多かった時代に、アコースティックギターの柔らかなカッティングと異国情緒あふれるボサノヴァのリズムをメジャー1発目に選んだことは、業界関係者に大きな衝撃を与えました。
アルバム『Tierra』(大地・地球を意味するスペイン語)の幕開けを飾る重要な位置付けとして、本作はバンドの音楽的多様性と芸術性の高さを決定づける金字塔となったのです。