肉割烹の潮流を語る上で欠かせないのが、東京と京都という二大都市における独自の発展です。
東京の名店トレンド:イノベーティブな技術とペアリングの深化
銀座、西麻布、赤坂を中心に展開する東京の肉割烹名店では、伝統的な和の技法にフレンチの火入れ理論や分子ガストロノミー的知見を掛け合わせた先進的な試みが目立ちます。例えば、但馬牛の純血統血統にこだわり、マイナス数度でじっくり熟成をかけたヒレ肉を低温の炭火で1時間以上かけてアロゼ(油を回しかける)しながら焼き上げる店舗や、世界的な銘醸ワインと純米大吟醸を交互に合わせるハイブリッドペアリングが定着しています。
京都の名店トレンド:出汁文化の伝統と滋味深い経産牛の昇華
祇園や宮川町の路地裏に佇む京都の肉割烹は、日本料理の本流としてのプライドが色濃く反映されています。利尻昆布と本枯節で引いた一番出汁をベースに、サシの強さよりも赤身本来の旨味が強い「長期肥育牛」や「経産牛(出産を経験した雌牛)」をじっくり煮含める手法が評価を集めています。祇園の有名割烹出身の店主が手がける店舗では、数寄屋造りの空間で四季折々の京野菜と牛ヒレ肉を合わせた椀物が供され、国内外のVIPから数ヶ月先まで予約が埋まる状況が続いています。
2026年の注目トレンド:「脱・過剰霜降り」と「部位特化の解体技術」
2026年現在の業界トレンドとして特筆すべきは、「A5ランクの脂至上主義からの脱却」です。霜降りの美しさだけでなく、牛の飼育環境、月齢、飼料設計にまで踏み込み、サガリ、ミスジ、イチボ、カメノコといった各部位の繊維方向や筋膜の処理をミリ単位で変える「解体美学」が評価の指標となっています。