心臓の鼓動や血圧の調整を司る自律神経系には、身体を活動モードにする「交感神経」と、リラックス・休息モードにする「副交感神経」があります。迷走神経はこの副交感神経の主軸を担う重要な神経です。
通常、強い痛みや心理的恐怖、過度のストレスを感じると交感神経が急上昇して血圧が上がります。しかし、身体がその過剰な興奮を抑え込もうと急ブレーキをかけた際、副交感神経(迷走神経)が反射的に過剰興奮してしまうことがあります。これが迷走神経反射(血管迷走神経性失神)の本態です。
この反射が引き起こされると、心拍数が急低下する「徐脈」と末梢血管の拡張による「急激な血圧低下」が同時に発生します。その結果、重力に逆らって頭部へ送り出すべき血液量が激減し、脳が一時的な虚血状態に陥って意識を失う(失神する)のです。
臨床データによると、迷走神経反射を引き起こす決定的な原因・トリガーには以下のような日常的なシチュエーションが挙げられます。
- 医療行為・身体的侵襲:健康診断の採血針の刺入、注射、内視鏡検査、歯科治療など
- 強い感情的ストレス・恐怖:血液や生傷の目撃、激しいパニック、極度の緊張
- 生理的排泄・身体的負荷:排便や排尿時のいきみ、激しい咳き込み、熱い風呂上がりの立ち上がり
- 長時間の同一姿勢:通勤ラッシュ時の満員電車での直立、炎天下での朝礼や待機
- 自律神経の乱れ・消耗状態:睡眠不足、水分不足(脱水)、空腹、過労、二日酔い