『メロディー』という楽曲が生まれた背景を紐解くには、1990年代前半の玉置浩二が置かれていた過酷な音楽的・精神的状況に目を向ける必要があります。1982年のデビュー以降、『ワインレッドの心』『恋の予感』『悲しみにさよなら』など数々のメガヒットを連発し、瞬く間に日本最高峰のバンドへと上り詰めた安全地帯は、過密なスケジュールと商業的プレッシャーのなかで疲弊し、1993年に2度目の活動休止へと追い込まれました。
北海道旭川の合宿生活からスタートし、文字通り寝食を共にして夢を追いかけてきた武沢侑昂(Gt)、矢萩渉(Gt)、六土開正(Ba)、田中裕二(Dr)という無二の仲間たち。彼らと離れ離れになり、ソロアーティストとして活動するなかで、玉置の胸中に去来したのは底知れぬ孤独感でした。当時の音楽関係者の回顧録やメディアインタビューによると、玉置は一人でスタジオに入りながらも「あいつらは今どうしているだろうか」「自分がバンドを壊してしまったのではないか」という自責の念に苛まれていたといいます。
そうした魂の彷徨の果てに生まれたのが『メロディー』でした。本作で歌われる「きみ」とは、特定の女性である以前に、青春のすべてを共に駆け抜けた安全地帯のメンバーたち、そして純粋に音楽だけを信じていた若き日の自分自身にほかなりません。失われてしまったかけがえのない時間への哀悼と、それでも胸の奥で鳴り止まない音楽への渇望が、あの切なくも温かい旋律へと昇華されたのです。