多くの生活者が抱く最大の誤解は、「クリーニング店に出せば、どんな汚れも魔法のようにすべて綺麗になって戻ってくる」という思い込みです。洗浄の科学において「油は油を溶かし、水は水溶性の物質を溶かす」という大原則は揺らぎません。
着用したスーツやジャケットの内側には、体から分泌された「皮脂(油性汚れ)」と「汗・水分(水溶性汚れ)」が同時に付着しています。通常のドライクリーニングを行うと、皮脂などの油膜は綺麗に溶け去りますが、汗に含まれる塩分、尿素、乳酸といった水溶性成分は繊維に残ったままになります。汗を吸ったスーツをドライクリーニングだけで何年も処理し続けると、残った成分が酸化して黄ばみやゴワつき、嫌な臭いの原因となるのはこのためです。
こうしたドライクリーニングの弱点を克服するためにプロの現場で用いられるのが、高度な技術で水洗いを行う「ウェットクリーニング」や、店舗オプションの「汗抜き加工」です。
夏場に着用して汗をたっぷり吸ったスーツや、汗ジミが気になるブラウスを出す際は、単なる通常コースではなく、「汗抜き加工(水溶性汚れ用ソープを添加した特殊ドライ、または部分的なウェット処理)」を指定することが、衣類の寿命を延ばす決定的なポイントとなります。