結論から明かせば、「風あざみ」という植物は地球上に実在しません。日本植物分類学会のデータベース、牧野日本植物図鑑、あるいは広辞苑や新明解国語辞典といった主要な辞書をどれほど紐解いても、「風あざみ」という項目は見当たりません。
植物学的に存在するのは、キク科アザミ属に分類される「ノアザミ(野薊)」や「フジアザミ(富士薊)」、「モリアザミ(森薊)」などの種です。ではなぜ、これほど多くの日本人が「風あざみという可憐な野草が実在する」と信じ込んでいたのでしょうか。
その背景には、日本語の形態素としての完璧な親和性があります。「風」という自然現象と「アザミ」という実在の植物名が組み合わさることで、晩夏の風に揺れる紫の花の情景が、脳内に鮮明な映像として立ち上がる仕掛けになっているのです。