山口智子を語る上で欠かせないのが、2016年に女性ファッション誌『FRaU』のロングインタビューで明かされた「子供を持たない人生」に対する告白です。当時50代を迎えていた彼女が語った率直な言葉は、日本社会に大きなインパクトを与えました。
取材のなかで山口は、「子供を産んで育てる人生以外の選択肢を自分で選んだ。夫とふたりで生きる人生に一片の後悔もない」という趣旨の覚悟を明言しました。この決断の根底には、彼女が生まれ育った実家の老舗旅館における複雑な家庭環境(両親の不仲や離婚、祖母に育てられた経験)が深く関係しています。血のつながりによる家族という枠組みに対して幼少期から懐疑的な視点を持っていたことが、独自の家族観を形成する契機となりました。
昭和から平成にかけて根強く残っていた「結婚したら子供を産むのが当たり前」という無言の社会的同調圧力に対し、自らの意思で人生のハンドルを握る姿勢を示したこの告白は、同じように悩む多くの現代女性から絶大な支持を集めました。自らの価値観を偽らず、パートナーと合意の上で選択した道だからこそ、現在も揺らぎのない幸福感を維持できているのです。