ブレッド&バターのサウンドを語る上で欠かせないのが、彼らの生まれ故郷である神奈川県茅ヶ崎市の風土です。加山雄三に代表される湘南サウンドの直系でありながら、彼らのルーツにはアメリカンフォーク、ウエストコーストロック、ボサノヴァ、ソウルミュージックが絶妙なバランスで溶け込んでいます。
1969年、シングル『傷だらけの軽井沢』で鮮烈なメジャーデビューを飾ったふたりは、フォークブームの熱狂の中で独自のポジションを築き始めます。しかし、彼らの歩みは決して順風満帆なヒットチャート街道だけではありませんでした。商業主義的な音楽業界のシステムと自分たちが目指す純粋な音楽性との間で葛藤を抱えた兄弟は、一時的に活動を休止し、茅ヶ崎の海岸近くに実店舗のカフェ「ブレッド&バター」を開業した時期もあります。
このカフェには、当時の若手気鋭ミュージシャンやサーファー、クリエイターたちが夜な夜な集まり、湘南カルチャーのハブとして機能しました。現場の空気感をそのまま音楽にフィードバックさせる独自の制作スタイルが確立されたのもこの時代です。兄弟は自らの手で生活と音楽を地続きにし、時代の流行に迎合しないオーガニックな音楽性を磨き上げていきました。