風邪をひいた際に感じる関節痛について、「ウイルスが骨や関節の軟骨に入り込んで悪さをしている」と誤解している人は少なくありません。しかし、実際の風邪関節痛原因はウイルスそのものの破壊工作ではなく、侵入者を撃退するために自身の身体が引き起こす免疫反応にあります。
体内に呼吸器系ウイルスが侵入すると、マクロファージなどの免疫細胞が異物を検知し、警報シグナルとしてサイトカイン(TNF-α、インターロイキン-1、インターロイキン-6など)を一斉に血中へ放出します。このサイトカインの刺激を受けた脳の視床下部は、体温設定を上げてウイルスの増殖を食い止める指令を出します。そのプロセスで合成される生理活性物質がプロスタグランジン(特にPGE2)です。
プロスタグランジンは体温を上昇させる重要な役割を担う一方で、知覚神経の痛みの閾値を著しく低下させ、痛覚を敏感にする働きを持っています。その結果、日常のわずかな負荷しかかかっていない関節周辺の腱、靱帯、関節包の神経が強い痛みとして脳に伝達されます。つまり、関節の痛みは免疫系がフル稼働してウイルスと交戦している「防衛戦の副産物」なのです。