「階段下のデッドスペースを有効活用したい」という願望は、日本の都市型住宅における永遠のテーマといえる。とりわけ2024年から2026年にかけて木材価格の高騰や坪単価の上昇が続く中、居住面積を1平方センチメートルたりとも無駄にしたくないという心理は一段と強まった。しかし、そこに潜む落とし穴こそが、斜め天井に合わせて作られた棚の使いにくさである。
階段下の傾斜角度は、一般的な住宅の階段勾配に連動しておよそ35度から42度の急傾斜を描く。この斜面に沿って水平に棚板を渡すと、上段に行けば行くほど「天井が頭上に迫り、収納物の高さが制限される」という現象が起きる。一方で、階段下収納の奥行きは階段の有効幅に準じるため、約90cm〜100cmに達することが大半だ。
ここに人間工学上の致命的な矛盾が生じる。成人成人の腕のリーチは平均して60cm前後にすぎない。奥行きが90cmある空間に固定棚を設けると、奥の30cmは「手が届かない、あるいは視界から完全に消えるブラックホール」と化す。斜め天井の棚受け設置によって作られたスペースは、手前の物が邪魔をして奥の物が取り出せず、奥の物を取り出そうとすると斜めの天井に頭を打ち付けるという二重苦を生み出す構造になっている。
階段下収納使いにくい真相と解決策を追究する建築関係者への取材では、「斜めの空間に対して二次元的な棚板を何段も差し込む設計そのものが、動線の破綻を招いている」との指摘が一致して聞かれた。見た目のシンデレラフィットを追い求めるあまり、人間が物を出し入れする際の「身体の侵入スペース」を計算から除外してしまうことが、最大の失敗原因となっている。