2018年4月期に放送された『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(主演・杉咲花、共演・平野紫耀)は、かつての『花より男子』の正統続編として大きな注目を集めました。しかし、視聴率という指標だけを切り取ると、全話平均8.3%と『花男』本編の半分以下の数値にとどまっています。
この数値ギャップを「前作割れの失敗」と結論づけるのは、メディアアナリストとして早計です。ここには、平成中期から令和にかけて起きたテレビの視聴形態における不可逆的なパラダイムシフトが存在します。
2000年代中盤の『花より男子』放映当時は、TVerのような無料見逃し配信サービスも、Netflixなどの定額制動画配信サービスも存在しませんでした。ドラマを観るためには「金曜夜10時にテレビの前に正座する」か「ハードディスクレコーダーで録画する」しか選択肢がなく、世帯視聴率がそのまま作品の社会的影響力と直結していた時代です。
対して2018年の『花のち晴れ』は、リアルタイム視聴率こそ1桁台であったものの、見逃し配信の再生回数は当時のTBS史上最高記録を次々と更新しました。さらに、第1話に松本潤演じる道明寺司がサプライズ登場した瞬間には、世界中のX(旧Twitter)トレンドで第1位を獲得し、サーバーを一時的にダウンさせるほどの反響を呼んだのです。現代のドラマ評価軸である「見逃し配信数」「コア層(13〜49歳)視聴率」「SNS拡散力」で見れば、『花のち晴れ』もまた強力なムーブメントを起こしていました。世帯視聴率の推移は、作品自体の優劣ではなく、メディア環境の変化を雄弁に物語っています。