オタク層からの圧倒的な支持を背景に、2008年に第92代内閣総理大臣へと就任した麻生氏。その任期中、文化政策の目玉として打ち出されながら、凄まじい政治的摩擦を引き起こしたのが「国立メディア芸術総合センター構想」、通称「アニメの殿堂」です。
世界的な評価を受ける日本のアニメ、マンガ、ゲーム、メディアアートを一元的に収集・保管・展示し、研究者やクリエイターの国際的なハブとする構想であり、2009年度の補正予算に約117億円の建設関連費用が計上されました。
しかし、折しも世界はリーマン・ショック後の深刻な不況の真っただ中。当時の野党第一党であった民主党(現・立憲民主党など)や主要マスメディアは、この構想を「困窮する国民生活を無視した税金の無駄遣い」「巨額の税金で作る国営マンガ喫茶」と猛烈に糾弾しました。世論の反発もすさまじく、2009年夏の衆院選で自民党が歴史的惨敗を喫して下野すると、誕生した鳩山由紀夫政権によって同センターの予算は真っ先に執行停止・白紙撤回となりました。
時を経て振り返ると、この白紙化がもたらした傷跡の深さが浮き彫りになります。庵野秀明氏らが設立した特定非営利活動法人ATAC(アニメ特撮アーカイブ機構)をはじめとする関係者の尽力にもかかわらず、公的な保存基盤が存在しなかったために、日本が誇るアニメのセル画や貴重な設定資料は海外の個人コレクターやオークションへと流出し続けました。「国営マンガ喫茶」というワンフレーズによる政治闘争の代償として、日本の文化遺産の散逸を招いてしまった事実は否定できません。