ネット上のQ&Aサイトや知恵袋などで散見される最大の誤解が、「大人になってから軽度知的障害になった」という認識です。この点について、医学的な診断基準に基づく事実を整理しておく必要があります。
DSM-5(米国精神医学会の診断基準)およびICD-11(世界保健機関の基準)において、知的障害(知的能力障害)は「発達期(概ね18歳未満)に発症する」ことが必須要件とされています。つまり、大人になって突然知的障害を発症することは医学的にあり得ません。
「大人になってから判明した」というのは、子どもの頃は以下のような理由で見過ごされていたに過ぎないのです。
- 学校教育の構造:定型的な時間割やドリル学習など、決められた枠組みの中では真面目に努力することで平均点近くを維持できていた。
- 家庭環境によるサポート:親が身の回りの手続きや金銭管理をすべて代行していたため、実質的な自立度の低さが隠れていた。
- 社会構造の変化:現代の労働環境は、マニュアル化された単純労働が減少し、ITツールの操作、迅速な情報伝達、協調性といった高度な認知的負荷を要求する環境へとシフトしている。
なお、成人後に脳卒中や交通事故、頭部外傷、認知症などによって知能指数が低下した場合は、知的障害ではなく「高次脳機能障害」や「器質性精神障害」として区別されます。