ベンチプレスの重量を伸ばそうとする過程で、多くの人が陥る代表的な誤解が「胸の筋肉(大胸筋)さえ鍛えれば重量は伸びる」という思い込みです。ベンチプレスは単関節運動(アイソレーション種目)ではなく、全身の連動を用いる複合関節運動(コンパウンド種目)です。
重量が頭打ちになる主な原因は、大胸筋の出力不足よりもむしろ「肩甲骨の固定力(僧帽筋・菱形筋)」「上腕三頭筋の押す力」「広背筋のスタビリティ」の不足にあります。土台となる背中の筋肉が緩んでいると、大胸筋が発揮したエネルギーがベンチ台へ逃げてしまい、バーベルへ効率よく伝達されません。
また、「毎日ベンチプレスをやれば早く強くなる」という高頻度トレーニングの盲信も危険です。大胸筋や肩の回旋筋腱板(ローテーターカフ)は回復に48〜72時間を要します。過剰な頻度は筋肥大を妨げるだけでなく、肩峰下インピンジメント症候群や手首の腱鞘炎を引き起こす最短ルートとなります。